経理の転職でAIの影響をどう見るか:減る作業と、評価される「仕組みを作った経験」の書き方
結論
AIで減るのは入力・転記で、経理の転職で強みになるのは「どこを自動にして、どこを人が確かめるか」を決めて毎月回した経験です。
私には管理部門の転職の経験がありません。転職の進め方の部分は、公開されている情報をもとにまとめています。経理の実務の部分は、従業員10人規模の会社で経理・人事労務を一人で回した経験から書いています。
- AIで減るのは 入力・転記 です。仕訳も、AIが候補を作り、人が確かめて登録する 形が、会計ソフトの機能としてすでにあります
- 経理の転職で強みになるのは「AIを使えます」の一言ではなく、どこを自動にして、どこを人が確かめるかを決めて、毎月回るようにした経験 です
- 職務経歴書には、①何の作業を ②どう変えて ③人はどこを確かめ ④どれだけ減ったか の4つで書きます。数字は自分の実績だけ使います
この記事が役に立つ人
- 経理を続けたいが、AIで仕事が減るのが気になって転職を考えている人
- 小さな会社で経理を一人で担当し、仕訳の自動化や、ツールの連携をしてきた人
- 自動化の経験を、職務経歴書や面接でどう伝えればよいか迷っている人
AIで減る作業と、人に残る判断
会計ソフトの公式の説明を見ると、「どこまで機械がやり、どこから人が見るか」がはっきり分かれています。例として、マネーフォワード クラウド会計の公式情報で整理します。
| 作業 | AI・自動化が担う所 | 人に残る所 |
|---|---|---|
| 口座・カードの明細の入力 | 連携した口座・カードから明細を自動で取得する(公式) | 連携が止まっていないか、取れていない明細がないかを見る |
| 勘定科目を付ける | AIが勘定科目を学習して提案する(公式) | 提案が合っているかを見る。迷うものは税理士と確かめる |
| 証憑(領収書など)から仕訳を作る | 「AI-OCRから入力」でファイルから仕訳候補を作る(公式ヘルプ) | 候補の内容を確かめ、直してから「登録」を押す |
| 同じ内容の証憑の繰り返し | AI-OCRの自動仕訳ルールが、登録した仕訳の勘定科目・補助科目・部門・摘要などを学習し、同じ内容の証憑に仕訳候補を出す(公式ヘルプ) | ルールを作る・直す・消す |
| 給与・経費の仕訳 | クラウド給与で確定した給与は、会計の「給与から入力」の画面に出て、そこから仕訳を登録する(公式ヘルプ)。クラウド経費は、会計への仕訳の連携を設定でき、会計の「経費・債務支払から入力」の画面に仕訳候補が出る(公式ヘルプ)。勤怠は会計ではなく、給与計算へつなぐ(公式ヘルプ) | 連携の設定と、月末の突き合わせ(件数・合計・残高) |
この表の右の列が、自動化が進んでも残る仕事です。まとめると ルールを決める/例外を判断する/突き合わせて確かめる/専門家と確かめる の4つになります。
私が一人で回していたときも、時間がかかっていたのは 経理・管理会計・仕訳 でした。このうち、自動化していちばん楽になったのは 仕訳 です。給与・勤怠・経費から会計へ仕訳が入るように連携もしていました。なお、上の表のとおり、マネーフォワード クラウドでは勤怠は給与計算に取り込まれ、給与計算の結果が会計へつながる形です。
転職で「AIの影響」をどう見るか
「経理の仕事はなくなるか」という問いより、転職では 自分の経験が、自動化が進んだ職場でも使えるか を考える方が役に立ちます。
管理部門の転職エージェントの記事でも、AI時代に評価される方向として、会計・税務の資格やITの知識と並んで 業務改善・DX推進の経験 が挙げられています(ジャスネットキャリア、2026-07-24)。
採用する側から見ると、次の3つが分かる人は、自動化が進んだ職場でもすぐに任せやすくなります(一般論)。
- 使えるツール:会計・給与・勤怠・経費のどのソフトを、どの範囲で使ったか
- 自動にした範囲と、人が確かめた範囲:何を連携やルールに任せ、何を毎月自分で見たか
- 判断の線引き:科目・税区分・社会保険などで迷うものを、自分で決めずに誰と確かめたか
プログラムを書けるかどうかは、3つめまでには入っていません。連携やルールの設定で、手作業を減らした経験 も、2の経験になります。
経験を棚卸しする表
職務経歴書を書く前に、自動化した作業ごとに1行ずつ埋めます。思い出せない数字は空欄のまま にして、推測で埋めないでください。
| 項目 | 書くこと | 埋め方のヒント |
|---|---|---|
| ① 何の作業か | 仕訳、経費精算、給与の仕訳、明細の取り込み など | 作業の名前で書く |
| ② 前はどうしていたか | 手で入力していた、CSVを見て転記していた など | 月にかかっていた時間があれば書く |
| ③ どう変えたか | ツールの連携、自動仕訳のルール、CSVの変換 など | ツールの名前と、設定した範囲 |
| ④ 人が確かめる所 | 例外の取引、税区分、月末の突き合わせ など | 自動にしなかった理由も書く |
| ⑤ 効果 | 毎月の作業時間、締めの日数 など | 自分の実績の数字だけ |
| ⑥ 誰と決めたか | 顧問の税理士・社労士 など | 確かめた内容の種類だけ(相手の名前は書かない) |
業務の範囲・専門家との連携まで含めた、経験全体の整理のしかたは 一人経理の経験を、転職で伝えるときの整理のしかた にまとめています。
職務経歴書の書き方の見本
棚卸し表の①〜⑥を、そのまま文章にします。◯の所は自分の実績に置き換えます(下は書き方の見本で、実在の例ではありません)。
【業務改善】仕訳の入力を、ツールの連携と自動仕訳のルールに置き換え
- 背景:給与・経費・口座の明細を、毎月手で会計ソフトに入力しており、月◯時間かかっていた
- 取り組み:勤怠を給与計算へ取り込み、給与・経費から会計ソフトへ仕訳が入るよう連携を設定。繰り返しの取引は自動仕訳のルールにした
- 人が確かめる所:初めての取引と税区分に迷う取引は、顧問税理士と確かめてから登録。月末に件数・合計・残高を突き合わせる
- 効果:仕訳にかかる時間が月◯時間から◯時間に減った
書くときは、次の2点に気をつけます。
- 「AIを使いこなした」のような、中身の分からない言葉で済ませない。何を・どこまで、と書けば、それで伝わります
- やっていないことを、やったように書かない。面接で「どう設定したか」を聞かれたときに答えられる範囲だけ書きます
面接で深掘りされたときに備えておく問い
見本のように書くと、中身を聞かれることがあります。次の3つは、答えを用意しておくと話しやすくなります。
| 問い | 答えの組み立て |
|---|---|
| 自動化が間違えたら、どう気づきますか | 月末の突き合わせ(件数・合計・残高・期間)で見る、と具体的に言う |
| プログラムは書けますか | 書けなくても、どこを自動にして、どこを人が見るかを決めた経験を話す |
| あなたが休んだら、仕事は止まりますか | 業務の手順とルールを書き出して、ほかの人でも回せる形にしたかを話す |
3つめは、一人担当の人ほど準備しておきたい問いです。答えの土台になる業務フローのルール化は 一人バックオフィスで最初にやるべきは、ツールより業務フローのルール化 にまとめています。
一人経理ならではの注意
- 前の勤務先で作ったコード・設定・データは、持ち出さない・見せない。職務経歴書や面接で伝えるのは「何をどう変えたか」の説明までにします。私の仕訳の自動化も勤務先の業務として作ったものなので、このサイトでもその中身は出していません
- 取引先の名前や金額は書かない。小さな会社は、少しの情報で会社が分かってしまいます
- 「一人でやった」ことと「専門家と決めた」ことを分けて書く。迷うものを税理士や社労士に確かめてきたことは、それ自体が判断の線引きができる証になります。私も、迷うものは顧問の税理士・弁護士・社労士に相談していました → 一人バックオフィスの相談先
求人票で見ておくこと
AIの影響が気になる人は、応募する前に、求人票や面接で次を確かめておくと、入ってからの食い違いを減らせます。
- 使っている会計・給与・経費のソフト:クラウドか、ほかのツールとつながっているか
- 経理の人数と、一人で見る範囲:月次だけか、決算・給与・社会保険まで含むか
- 仕事内容に「業務改善」「システム導入」が入っているか:自動化の経験を生かせる余地があるか
- 税理士・社労士との分担:決算や申告をどこまで自分で担当するか
相談先
自分の経験がどの求人に合うかを確かめる方法の一つが、管理部門に特化した転職エージェントへの相談です。相談するなら、棚卸し表と職務経歴書の下書きを持っていくと、話が進みやすくなります。各社の違いは 管理部門に特化した転職エージェントの比較 にまとめています。
まとめ
- AIで減るのは 入力・転記。仕訳も、AIが候補を作り、人が確かめて登録する 機能が会計ソフトにすでにある
- 転職で強みになるのは、どこを自動にして、どこを人が確かめるかを決めて回した経験
- 職務経歴書は 何の作業を/どう変えて/人はどこを確かめ/どれだけ減ったか の4つで。数字は自分の実績だけ
次に読む:一人経理の経験を、転職で伝えるときの整理のしかた / 仕訳を自動化する方法:明細のCSVから会計ソフトに取り込むまで