一人で回す

一人経理の業務フロー表の作り方【テンプレートあり】:引き継ぎマニュアルにもなる4枚

結論

経理の業務フローは図より先に「1業務1行の表」で作り、引き継ぎマニュアルは業務フロー表・期限カレンダー・判断の記録・権限の一覧の4枚から始めます。

  • 経理の業務フローは、図より先に「表」で作るのが早いです。1つの業務を1行にして、期限・始める人・入力する場所・確認する人・次に渡す先・例外のとき を埋めます
  • 引き継ぎマニュアルは、分厚い手順書でなくてかまいません。まず ①業務フロー表 ②1年の期限カレンダー ③判断の記録 ④アカウントと権限の一覧 の4枚があれば、ほかの人が「何を・いつ・誰に聞けばよいか」が分かります
  • 一人担当は、「確認する人」の欄が自分しかいない行 に印を付けます。そこが、ミスに気づけない所であり、休むと止まる所です

私は従業員10人規模の会社で経理・人事労務を一人で回してきましたが、「先にやっておけばよかった」と思ったのが、この 業務フローのルール化 でした。この記事の表は、その考え方で新しく作ったひな形です。記入例はすべてダミーです。

この記事が役に立つ人

  • 経理(と給与・労務)を一人で担当していて、業務が自分の頭の中にしかない人
  • 引き継ぎマニュアルを作るように言われたが、何から書けばよいか分からない人
  • これからクラウドの会計・経費・給与のソフトを入れる、または入れ直す人

上位の記事との違い

「経理 業務フロー 作り方」で上位に出る記事は、複数人の経理部を前提に、日次・月次・年次の業務の例と、図の記号(開始・処理・判断など)を説明するものが多いです。「経理 引き継ぎ マニュアル」の上位には、一人・少人数の経理に向けて、年間スケジュール・手順書・判断基準の作り方まで書いた記事もあります。ただ、記入例つきでそのまま書き込める表や、アカウントと権限の一覧まで載せた記事は、2026-09-25 に確かめた範囲では見当たりませんでした。

この記事は、その「書き込める表」を出すことに絞ります。

よくある記事この記事
前提複数人の経理部を前提にした記事が多い担当は一人、確認してくれる人がいない
出てくるもの業務の例と、図の書き方コピーして使える4枚の表(ダミーの記入例つき)
例外の扱い手順書や判断基準として別にまとめる表に「例外のとき」の列を作り、判断の記録とつなぐ
期限年間スケジュールの枠まで(期限の日付と公的機関の出典までは載せていないものが多い)毎月・毎年の期限を、公的機関のページつきで一覧にする
アカウントと権限触れていないものが多い誰が管理者として入れるかの一覧を付ける(パスワードは書かない)

業務フローと引き継ぎマニュアルは、どう分けるか

どちらも「業務を人に渡せる形にする」ものですが、役割が違います。

業務フロー(表)引き継ぎマニュアル(手順書)
分かること誰が・いつ・何を・どこに入れ、誰が確かめて、次に誰へ渡すかソフトのどの画面で、どのボタンを押すか
粒度1業務1行1業務で数ページになることもある
変わる頻度少ない(流れはそう変わらない)多い(ソフトの画面が変わるたびに直す)
先に作るのはこちらフロー表ができてから、止まると困る業務の分だけ

一人担当は、時間がないので フロー表を先に作り、手順書は必要な業務だけ にします。画面の手順は、ソフトの公式ヘルプへのリンクで代えられることも多いです。

作り方:5つの手順

手順やること目安
1業務を洗い出す。1週間、やった作業を1行ずつメモする。年に1回の業務は、前の年の書類・メール・カレンダーから拾うメモは1日数分
2周期と期限で並べる。毎月・毎年・そのつど、に分け、期限のあるものを「②1年の期限カレンダー」に写す1回30分ほど(推定)
31業務1行で「①業務フロー表」に書く。まず毎月の業務だけでよい1業務10分ほど(推定)
4「例外のとき」の列を埋める。過去に迷ったこと、顧問に聞いて決めたことを思い出して書く。思い出せなければ空けておき、起きた日に足す起きた日に1行
5ほかの人が読んで回せるかを確かめる。社内の誰かに1業務だけ読んでもらい、分からないと言われた所を直す1業務15分ほど(推定)

一度に全部を作ろうとすると止まります。1回20〜30分で1業務 くらいの小さな単位で進めます。

テンプレート①:業務フロー表

列は8つです。スプレッドシートに貼るときは、この表をそのままコピーしてください。記入例はダミー です。自社の締め日・支払日に置き換えて使います。

業務周期期限始める人入力・保存する場所確認する人次に渡す先例外のとき
経費精算毎月例:5日までに前月分を申請立て替えた従業員経費精算のソフト(領収書の画像を添付)上長が承認 → 経理が内容を確認会計に仕訳が入る → 給与と一緒に振り込み締め切り後の申請は翌月に回す
勤怠の締め毎月例:月末締め、翌月3営業日までに打刻の直しを確定各従業員(打刻・申請)勤怠のソフト上長が承認 → 経理が残業・欠勤を確認給与計算へ締めの後に直しが出たときの扱いは、社労士に確かめて「③判断の記録」に書く
給与計算毎月例:支給日の3営業日前に振込データを作る経理給与のソフト★確認する人を決める(例:社長が総額だけ承認)振込 → 会計に仕訳が入る月の途中の入社・退職がある月は、計算前に対象者の一覧を作る
請求書の発行毎月例:月末締め、翌月3営業日までに送付営業の担当者が内容を連絡請求書のソフト営業の担当者が金額を確認取引先へ送付 → 入金の確認へ金額が変わるときは、発行前に営業から一報をもらう
入金の確認毎月例:取引先の支払日の翌営業日経理会計ソフト(銀行の明細を取り込む)★自分だけ未入金の一覧を営業へ期日を過ぎた未入金は、営業から取引先に確かめてもらう
支払い毎月例:月末払い、前営業日までに振込の予約請求書を受け取った人共有フォルダ(受け取った請求書を置く)社長が振込を承認振込 → 会計に仕訳が入る支払日が近いのに請求書が届かないときは、受け取る担当者から取引先に確かめる
月次の締め毎月例:翌月10営業日まで経理会計ソフト★顧問の税理士に月1回見てもらう社長へ月次の数字を報告迷った仕訳は「③判断の記録」に書き、税理士に確認する
入社の手続きそのつど健康保険・厚生年金の資格取得届は事実発生から5日以内、雇用保険の資格取得届は被保険者となった日の属する月の翌月10日まで(表の下の出典)採用を決めた人が経理へ連絡労務のソフト社労士(手続きを頼んでいる場合)給与のソフトに登録入社日の直前に決まったときは、連絡をもらった日に社労士へ回す
退職の手続きそのつど健康保険・厚生年金の資格喪失届は事実発生から5日以内、雇用保険の資格喪失届は被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内、源泉徴収票は退職の日以後1か月以内、住民税の異動届は翌月10日まで(表の下の出典)退職の申し出を受けた人が経理へ連絡労務のソフト社労士(手続きを頼んでいる場合)住民税の異動届 → 市区町村最終給与で住民税の残りをどうするか、本人に確かめる
住所・扶養の変更そのつど変更があったら早めに従業員本人労務のソフト(本人が入力)経理社会保険の届出・給与の設定扶養の出入りは、年末調整の書類と食い違わないか確かめる

入社・退職の期限の出典:日本年金機構(資格取得)/日本年金機構(資格喪失)/厚生労働省(雇用保険の手続き)/国税庁 No.7411(源泉徴収票)/住民税の異動届は各市区町村の案内(例:江東区)。社労士に手続きを頼んでいる場合も、会社から社労士へ連絡する日 を表に書いておきます。

書き方の決まり

  • 「始める人」が自分以外の業務 は、従業員への一言と締め切りをセットにします。経費精算・勤怠・請求の元ネタは、ほかの人が動かないと始まりません
  • 「確認する人」が自分だけの行には ★ を付けます。★の行は、月に1回だけでも誰か(社長・顧問の税理士・社労士)に見てもらう形を考えます
  • 「例外のとき」は、判断そのものを自分で決めて書かない ことです。科目・税区分・社会保険の扱いのように判断が要るものは、顧問に確かめた結果を「③判断の記録」に書き、この列からはそちらを指します
  • ソフト名は、会社で使っているものに置き換えます。ソフトを入れ替えても、表の流れはほとんど変わりません

従業員に配る一言(例)

「始める人」が従業員の業務は、表と一緒に次のような一言を出しておくと、締め切りの問い合わせが減ります。

経費精算は、毎月5日までに前月分を経費精算のソフトで申請してください。領収書の画像を付けてください。5日を過ぎた分は、翌月の精算に回ります。急ぎのときは、申請したあとに経理へ一声かけてください。

テンプレート②:1年の期限カレンダー

毎月の期限と、年に1回の期限を分けて書きます。期限は法律や自治体の決まりで、自分では変えられないもの です。自社の日付(給与の支払日・決算月)は、右の列に書き足します。

毎月の期限

いつまで何を対象の会社出典
翌月10日給与から引いた源泉所得税を納める原則すべて。給与の支給人員が常時10人未満で「納期の特例」を受けている会社は、1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日にまとめて納める国税庁 No.2505
翌月10日給与から引いた住民税(特別徴収)を市区町村に納める原則すべて。従業員が常時10人未満で納期の特例を受けている会社は、年2回(6月10日・12月10日)各市区町村の案内(例:江東区)
翌月末日健康保険・厚生年金の保険料を納める社会保険の適用事業所日本年金機構

期限の日が土日・祝日のときは、翌営業日になるものがあります。

10人前後の会社は、納期の特例の境目にいます。 自社が特例を受けているかどうかで、毎月の予定が大きく変わるので、カレンダーの一番上に書いておきます。

年に1回の期限

時期何を出典・詳しい記事
1月20日源泉所得税(7〜12月分)を納める(納期の特例を受けている会社)国税庁 No.2505
1月31日従業員に源泉徴収票を渡す。税務署に法定調書と合計表を出す国税庁 No.7411、No.7400
1月末ごろ市区町村に給与支払報告書を出す(土日の関係で後ろにずれる年がある)各市区町村の案内(例:江東区)。1月の期限日は 年末調整2026の順番
5月末まで市区町村から住民税の特別徴収税額の通知が届く。6月の給与から翌年5月まで、新しい税額で引く江東区
6月1日〜7月10日労働保険の年度更新(申告と納付)。令和8年度は6月1日(月)〜7月10日(金)厚生労働省
7月10日まで算定基礎届を出す(7月1日時点の被保険者の4〜6月の報酬)。決まった標準報酬月額は9月から翌年8月まで使う日本年金機構
7月10日源泉所得税(1〜6月分)を納める(納期の特例を受けている会社)国税庁 No.2505
10月〜1月年末調整(10月に対象者の洗い出し、11月に書類の配布と回収、12月の最後の給与で精算)一人で担当する年末調整2026の順番
決算月の翌月〜2か月後決算の準備と申告。消費税の確定申告は、課税期間の終了の日から2か月以内が原則国税庁 No.6610。法人税の期限や延長の有無は、顧問の税理士に確かめてカレンダーに書く

期限の日が土日・祝日のときは、翌営業日になるものがあります(例:2027年は1月31日が日曜、7月10日が土曜)。その年の期限日は、各機関のページで確かめてからカレンダーに書きます。

9月から標準報酬月額が変わっても、給与から引く額がいつ変わるかは、会社が保険料を当月の給与から引くか翌月の給与から引くかで違います。自社がどちらかを、この表の横に書いておきます。

テンプレート③:判断の記録(例外ノート)

業務フロー表の「例外のとき」に書ききれないことを、日付順に残します。引き継ぎでいちばん助かるのは、この記録 です。同じ迷いを、次の人が一からやり直さずに済みます。

日付何が起きたかどう処理したか誰に確かめたか次から同じときは
例:2026-04-08締め切り後に前々月分の経費精算が出てきた今月の精算に含めた社長2か月より前の分は、社長の承認を付けてもらう
例:2026-05-20初めての種類の支払いで、科目が分からなかった顧問の税理士に確認した科目で入力した(確認した内容を書く:___)顧問の税理士同じ支払いは、この行の科目で入れる
例:2026-06-12月の途中で入社した人の、最初の給与の計算方法が分からなかった就業規則を確かめ、社労士に確認した方法で計算した(確認した内容を書く:___)顧問の社労士月の途中の入社は、この行の方法で計算する
  • 科目・税区分・社会保険の扱いのように判断が要るものは、自分の判断ではなく、確かめた相手と答えを書きます。相談先の分け方は 一人バックオフィスの相談先 にまとめています
  • 「次から同じときは」の列が埋まったら、業務フロー表の「例外のとき」に1行で写します

テンプレート④:アカウントと権限の一覧

自分しか入れないサービスがあると、休んだ日に誰も操作できません。パスワードは書きません。 書くのは「誰が管理者として入れるか」までです。

サービス何に使うか管理者ほかに操作できる人2段階認証の端末・電子証明書などの保管権限を見直す時期
例:会計ソフト仕訳・月次の締め経理社長(閲覧のみ)、顧問の税理士(閲覧)経理の業務用スマホ担当が変わるとき
例:ネットバンキング振込の予約・承認社長経理(予約のみ)社長が保管担当が変わるとき
例:給与・労務のソフト給与計算・手続き経理★なし → 社長を管理者に追加する—今月中に
例:電子申告・電子申請の利用者登録税・社会保険の電子の手続き経理顧問の税理士・社労士(委任の範囲)会社で保管年1回
  • 「ほかに操作できる人」が「なし」の行は、社内のもう1人を管理者(または閲覧者)として追加してもらう のが先です。パスワードを渡すことではありません
  • お金を動かす承認(振込の承認など)は、経理と別の人 にしておくと、一人担当でも確認の目が1つ入ります

一人担当ならではのコツ

  • 完璧にしない。 毎月の業務の表と、期限のカレンダーだけでも、あるとないとで大きく違います
  • 例外は、起きた日に1行足す。 まとめて思い出そうとすると忘れます
  • 表の一番上に「最終更新日」を書く。 古い表は、ないより危ないことがあります
  • ★の行を月に1つずつ減らす。 「確認する人」が自分だけの業務を、承認だけ社長に頼む、月次を顧問に見てもらう、などで1つずつ減らします
  • 自分用のメモではなく、引き継ぎの資料として書く。 基準は「ほかの人がこの表だけ見て回せるか」です

休む・辞めるかどうかを考えている段階なら、この4枚のうち何から作るかの順番を 一人経理が休めない・辞めたいときに整理する3つのこと にまとめています。

図にするなら、そのあと

表が埋まれば、図にするのは難しくありません。「始める人」「確認する人」「次に渡す先」を横の帯(スイムレーン)にして、左から右へ業務を並べるだけです。社内に説明するときや、ソフトの導入の打ち合わせでは図が伝わりやすいので、表を先に作り、見せる相手がいる業務だけ図にする 順番にします。

ツールを入れるのは、そのあと

業務フロー表の列は、そのままクラウドのソフトの設定に対応します。

表の列ソフトで決めること
始める人申請できる人(従業員のアカウント)
確認する人承認の経路
入力・保存する場所どのソフトに入れ、どのソフトへつなぐか
次に渡す先会計への仕訳の連携、振込データの作成
例外のときソフトの設定でできないものは、運用のルールとして残す

表がないまま入れると、承認の経路や連携の設定を、その場の思いつきで決めることになります。表ができていれば、設定は「書いた流れをソフトに入れる」作業になります。

私が最後に使っていた構成は、会計・給与・勤怠・労務・経費をすべてマネーフォワード クラウドで統一したものです。その構成と入れる順番は 一人経理でマネーフォワード クラウドにそろえる に、会計ソフトをどちらにするか迷っている場合は freee会計とマネーフォワード クラウド会計の比較 にまとめています。月次の締めの順番そのものは 一人経理の月次の締め を見てください。

つまずきやすい所

  • 図から作ろうとして止まる — 記号やソフトの使い方で時間がなくなります。表が先です
  • 全業務を一度に書こうとする — 毎月の業務だけ、それも止まると困るもの(給与・支払い・納付)からで十分です
  • 「例外のとき」の列が空のまま — 引き継ぎで困るのは、いつもの流れではなく例外です。空欄は、起きた日に埋めます
  • 科目や税区分の判断を、自分で決めて表に書く — 判断が要るものは、顧問に確かめた答えを「判断の記録」に残します
  • パスワードを表やメモに書く — 書くのは管理者が誰かまで。社内の人を管理者に追加してもらいます
  • 作ったまま更新しない — ソフトや担当が変わったら、その日に表を直します。最終更新日を入れておくと、古さに気づけます

まとめ

  • 経理の業務フローは、図より先に表で作る。1業務1行、列は8つ
  • 引き継ぎマニュアルは、業務フロー表・1年の期限カレンダー・判断の記録・アカウントと権限の一覧 の4枚から
  • 一人担当は、「確認する人」が自分だけの行(★) を見つけて、1つずつ減らす
  • ツールの設定は、表ができてから

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