会計ソフトは顧問税理士の対応を確かめてから選ぶ:一人経理が税理士に聞く3つのこと
結論
会計ソフトは、料金や機能を比べる前に顧問税理士に3つ聞き、「招待してもらえれば、そのまま見られる」と返ってきたソフトを候補にします。
- 聞く3つ:①そのソフトのデータをどう受け取るか ②毎月どこまでを会社がやり、どこを見てもらうか ③契約は誰の名義で、切り替えはいつがよいか
- 「書き出したファイルなら受け取れる」は、「直接見られる」とは対応の意味が違います。一人担当には毎月の書き出しが残ります
- 税理士とのつなぎ方は、ソフトによって どちらから始めるか が違います。freee会計は会社から招待、マネーフォワード クラウドと弥生会計 Next は事務所からの申請を会社が承認します(公式ヘルプ・2026-09-25確認)
私が会計ソフトを選んだときも、決め手は、顧問の税理士が対応しているかどうか でした。
この記事のソフトごとの手順・決まりは、各社の公式ヘルプで 2026-09-25に確認 したものです。税理士事務所の側の画面や、士業向けの制度の中身は、事務所によって使い方が違うので扱いません。
この記事が役に立つ人
- 従業員10人前後の会社で、経理を一人で担当していて、決算・申告は顧問税理士に頼んでいる人
- 会計ソフトを新しく入れる、または乗り換えるかを考えていて、社長に「税理士は何と言っている?」と聞かれそうな人
- 税理士に何を聞けばよいか分からず、「どのソフトがいいですか」とだけ聞いてしまいそうな人
なぜ、税理士の対応を先に確かめるのか
決算と申告を税理士に頼んでいる会社では、会社がつけた帳簿を、税理士が見て、直して、申告書にする 流れになります。会計ソフトは、会社だけの道具ではなく、税理士と帳簿を受け渡す道具でもあります。
税理士がそのソフトで帳簿を直接見られないと、月次や決算のたびに、データを書き出して送る・質問をメールでやり取りする・直してもらった内容を自分のソフトに入れ直す、という作業が一人担当に残ります。料金が安いソフトでも、この往復が毎月あると、作業時間は減りません。
逆に、顧問税理士が普段から使っているソフトなら、つなぎ方・よく出る質問・決算の進め方を事務所の側が知っています。一人担当が聞ける相手が社内にいない分、ここは効きます。
税理士に聞く3つのこと
「どのソフトがいいですか」とだけ聞くと、答えは事務所の都合と会社の都合が混ざったものになりがちです。聞くことを3つに分けると、答えがそのまま選ぶ材料になります。
① そのソフトのデータを、どう受け取りますか
いちばん大事な質問です。「対応しています」という答えにも、中身が何通りかあります。
| 税理士の答え | 意味 | 一人担当の手間 |
|---|---|---|
| 招待(共有)してもらえれば、こちらからログインして見ます | そのソフトの帳簿を、事務所が直接見て直せる | 少ない。つなぐ設定を最初に一度するだけ |
| 書き出したデータを送ってもらえれば、事務所のソフトに取り込みます | 事務所は別の会計ソフト・申告ソフトを使っていて、受け取れる形式がある | 月次・決算のたびに書き出して送る。直された内容を自分のソフトに戻す作業が出ることもある |
| そのソフトは使ったことがありません | 事務所に慣れた担当者がいない | 大きい。質問のたびに説明する側に回る |
あわせて、次の2つを聞いておくと、つなぐ段で止まりません。
- 事務所が、そのソフトの士業向けの制度に入っているか — freee会計は「freee認定アドバイザー」、マネーフォワード クラウドは「公認メンバー制度」、弥生は「弥生PAP」です。制度への入り方で、つなぎ方と、会社側の人数の数え方が変わるソフトがあります。freee会計は、同じ制度の中でも会費の有無で数え方が違います(下の表と補足)
- 見てもらうのは会計だけか、給与や経費もか — 給与・年末調整を税理士に見てもらう会社は、会計以外のサービスも共有の対象になります。マネーフォワード クラウドと弥生 Next は、共有するサービスを選んで承認・設定します
② 毎月、どこまでを会社がやり、どこを見てもらいますか
ソフトが同じでも、分担が決まっていないと、同じ仕訳を二人が直したり、誰も見ていない月ができたりします。
- 会社が入力するところ:預金・カードの明細の取り込み、請求書・領収書の登録、給与の仕訳など、どこまでを会社がやるか
- 事務所が見る頻度:毎月か、四半期か、決算だけか。月次で見てもらうなら、何日までに入力を終えればよいか
- 仕訳を直したときの知らせ方:事務所が科目や税区分を直したとき、会社にどう伝えるか(コメント・メール・月次の打ち合わせ)。知らせがないと、次の月も同じ入れ方を続けてしまいます
- 科目・補助科目の分け方:会社で細かく分けたい科目があるなら、決算書でどう見えるかを先にすり合わせる
一人担当にとって、②は「分からないことを誰に・いつ聞けばよいか」を決める質問でもあります。迷った科目・税区分を自分だけで決めずに済む形にしておきます。相談先の分け方は 一人バックオフィスの相談先 にまとめています。
③ 契約は誰の名義で、切り替えはいつがよいですか
- 契約の名義と請求先:会社がソフトの会社と直接契約するのか、税理士事務所を通して契約するのか。事務所経由の場合、料金の請求元と、将来税理士を変えたときに契約とデータをどうするかを、今のうちに聞いておきます
- 顧問料が変わるか:ソフトを変えることで、事務所の作業が増える・減る場合、顧問料の見直しがあるか
- 切り替える時期:期首からにするか、期の途中からにするか。期の途中で切り替えると、期首からの仕訳を新しいソフトに寄せる作業が出ます
- 移行を見てもらえるか:科目の対応づけと開始残高を、事務所に確かめてもらえるか。見てもらう場合の費用
税理士に送る文面(見本)
そのまま貼って、【 】の中だけ埋めて使えます。メールでもチャットでも使える長さにしています。
いつもお世話になっております。【会社名】の【名前】です。
会計ソフトを【新しく入れる/乗り換える】ことを検討しており、決める前に3点お伺いさせてください。
候補は【freee会計/マネーフォワード クラウド会計/弥生会計 Next】です。
1. 候補のソフトのうち、先生の事務所で帳簿を直接見ていただけるのはどれでしょうか。
ファイルを書き出してお送りする形になるものがあれば、あわせて教えてください。
2. 月次は、こちらでどこまで入力し、先生にどの頻度で見ていただく形がよいでしょうか。
入力を締める期限の目安もいただけると助かります。
3. 契約は当社名義で直接でよいか、事務所を通した方がよいか。
切り替える時期(期首か期中か)と、移行を見ていただく場合の費用も教えてください。
【○月○日】ごろまでに社内で決めたいと考えています。よろしくお願いいたします。
答えで決める:選び方の分かれ道
| 税理士の答え | 選び方 |
|---|---|
| 候補のうち1つだけ「直接見られる」 | そのソフトを第一候補にして、無料の期間で自社の明細が取り込めるかを試す |
| 複数が「直接見られる」 | 次は、口座・カードの連携と、給与・勤怠・経費とのつながりで比べる → 会計ソフトを乗り換えるか決めるときに、一人経理が見る5項目 |
| どれも「ファイルなら受け取れる」 | 受け取れる形式と、毎月の書き出しの手間を聞いたうえで、他の条件で選ぶ。手間を社長に伝えておく |
| 候補のどれにも対応していない | 下の「対応していないと言われたら」へ |
候補を1つに絞れたら、無料の期間で、自社の口座の明細と、先月分の仕訳をいくつか入れてみるところまでで十分です。
広告:freee会計を無料で試す(法人向け) / マネーフォワード クラウドを無料で試す(法人向け) / 弥生会計 Nextを無料体験で試す(法人向け)
無料で試せる期間は、freee会計が30日間、マネーフォワード クラウドが1か月、弥生会計 Nextが最大2か月です(各社の公式の案内・2026-09-26確認)。3社とも、試す期間が終わって自動で有料の契約に移ったり、請求が発生したりすることはない、と下の公式のページに書かれています。マネーフォワード クラウドと弥生会計 Nextは、1事業者につき1回までです(マネーフォワード クラウドは、過去に有償の契約がない事業者が対象)。弥生会計 Nextは、体験が終わると無料プランに移り、会計 Nextにはログインできなくなります。
- freee会計を無料で30日間お試し(freee・よくあるご質問に「自動で決済されることはありません」)/freeeのアカウントを登録する(freeeヘルプ)
- 1ヶ月無料トライアルについて(マネーフォワード クラウド・「自動で有償契約に移行することはありません」)
- 弥生会計 Next(製品ページ・「無料体験終了後、自動的に請求が発生することはありません」)/弥生会計 Nextの無料体験プランを契約したい(弥生)
3社の、税理士とつなぐ方法(公式ヘルプ)
使うソフトが決まったら、税理士とつなぐ設定をします。どちらから始めるか がソフトによって違うので、税理士に「どちらから操作しますか」と聞くときの参考にしてください。
| freee会計 | マネーフォワード クラウド会計 | 弥生会計 Next | |
|---|---|---|---|
| 士業向けの制度 | freee認定アドバイザー | 公認メンバー制度 | 弥生PAP |
| 始めるのは | 会社が、アドバイザーを追加する画面から招待する | 事務所が、会社の事業者番号で承認申請を送る | 事務所が、「弥生製品の契約情報取得」のメールを送る |
| 会社がやること | 事務所から、事業所番号と担当者のメールアドレスを聞き、権限を選んで入力する | 事業者番号を事務所に伝え、届いた申請を承認する。事業者番号は会計の画面右上の「?」→「事業者番号」 | メールのURLから承認し、「弥生 Nextの連携設定」画面で共有するサービスにチェックして「変更する」 |
| 会社側の人数・料金 | 認定アドバイザーと、会費ありの制度加入者は、料金の発生するメンバー招待数に含まれない。会費なしの制度加入者は社内のメンバーとして数える | 公認メンバーの事務所の「士業アカウント」は、会計・請求書の従量課金の対象外 | 公式の記載は見つけられなかった。事務所か弥生に確かめる |
| 公式の税理士検索 | freee税理士検索 | マネーフォワード クラウドの税理士検索 | 税理士紹介ナビby弥生 |
出典:
- freee会計:税理士・会計士にfreeeの情報を共有する/freee会計のメンバー招待・権限
- マネーフォワード クラウド:顧問先の事業者を登録・閲覧するまでの流れ/「顧問先承認」および「サービス別承認」の設定内容について/各サービスの事業者番号の確認方法/従量課金から除外される「士業アカウント」の定義
- 弥生会計 Next:会計事務所とのデータ共有の流れ<弥生 Nextのデータ共有>/会計事務所とのデータ共有で許可する操作
補足:
- マネーフォワード クラウドの「士業アカウント」 は、事務所が公認メンバー制度に入り、会社を「顧問先」として登録している場合のアカウントです。制度に入っていない事務所の担当者を会社のユーザーとして追加した場合は、士業アカウントに当たらず、通常のユーザーと同じに数えられると考えられます(推定)。人数で料金が変わる会社は、つなぐ前に事務所に確かめます
- freee会計 は、認定アドバイザーの招待のしかたが、通常のメンバーの招待と異なります。招待は、管理者の権限で「その他設定」→「メンバー一覧・招待」→「アドバイザー追加」から行います。人数の数え方は、認定アドバイザーと会費ありの制度加入者は数えず、会費なしの制度加入者は社内のメンバーとして数えます(公式ヘルプ・2026-09-25確認)。招待する前に、事務所が認定アドバイザーか、制度に会費ありで入っているかを聞いておきます
- 弥生会計 Next の共有では、事務所に許可する操作は「データへのアクセス(確認、編集)」です。弥生のデスクトップ版や弥生会計 オンラインは、許可できる操作が Next と違います
対応していないと言われたら
選べる道は3つです。どれがよいかは会社の事情で変わるので、社長と税理士と一緒に決めます。
| 道 | 向いている場合 | 確かめること |
|---|---|---|
| 税理士が対応しているソフトに合わせる | 税理士との付き合いを変えたくない。候補にこだわる理由が弱い | そのソフトで、自社の口座・カードの連携と、給与・経費とのつながりが足りるか |
| 今のソフト(候補)のまま、ファイルで受け渡す | 候補のソフトを使いたい理由がはっきりしている | 受け渡しの形式・頻度と、毎月の書き出しにかかる手間 |
| 対応している税理士を探す | 顧問契約の見直しを、もともと考えていた | 今の事務所との契約の終わり方。探すなら上の表の公式の税理士検索 |
税理士を変えるのは、ソフトを変えるより大きな決定です。一人担当が単独で進める話ではないので、社長に材料を渡して判断してもらいます。
社長に伝える一言(見本)
10人規模の会社では、会計ソフトを決めるのは担当者一人ではなく、社長と税理士も関わります。税理士の答えが出たら、次の形で渡すと話が早く済みます。
会計ソフトの件、顧問の【○○先生】に確認しました。
・先生の事務所で帳簿を直接見られるのは【△△】です(【□□】はファイルで受け渡しになります)
・月次は【毎月/四半期】に見ていただき、入力は【翌月○日】までに締めます
・契約は【当社名義で直接/事務所経由】、切り替えは【期首(○年○月)】が先生のおすすめです
以上から【△△】で進めたいと考えています。料金の比較は別にお送りします。
つまずきやすい所
- 「対応しています」をそのまま受け取る — 直接見てもらえるのか、ファイルで受け取るのかで、一人担当の手間は大きく変わります。①の質問で中身まで聞きます
- 会計だけつないで、給与や経費を忘れる — 年末調整や給与の仕訳を見てもらうなら、そのサービスも共有の対象にします。マネーフォワード クラウドと弥生 Next は、サービスごとに承認・設定します
- 事務所の担当者の追加を後回しにする — つなぐには、事業者番号を伝える・申請を承認するといった、会社と事務所の間のやり取りが要ります。月次や決算の直前に慌てないよう、ソフトを決めた月のうちにつないでおきます
- 事務所経由の契約で、将来のことを聞かない — 税理士を変えることになったとき、契約とデータがどうなるかは、契約する前に聞いておく方が気が楽です
- 分担を決めずに始める — 事務所が直した仕訳に気づかず、翌月も同じ入れ方を続ける、ということが起きます。直したときの知らせ方を、最初に決めておきます。決めたことは業務フローに書いておくと、次から迷いません → 一人バックオフィスで最初にやるべきは、ツールより業務フローのルール化
まとめ
- 会計ソフトは、顧問税理士に3つ聞いてから 選ぶ:受け取り方/毎月の分担/契約の名義と時期
- 「直接見られる」と「ファイルなら受け取れる」は、一人担当にとって別物
- つなぐときは、freee会計は会社から招待、マネーフォワード クラウドと弥生会計 Next は事務所の申請を会社が承認
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